2022年3月23日水曜日

[メモ] #CSUNATC22で気になったガジェットなど10選。

   

Dot Pad

画像引用元


2022年3月15日から19日まで開催された題37回CSUN支援技術カンファレンスで気になったものなどのメモです。


1. Dot Pad by Dot Incorporation


BluetoothもしくはUSB-CでiPhone、iPadと接続し利用する点図/点字ディスプレイ。グラフィックス用として30x10セル、テキスト用として20x1セルの、リアルタイムでリフレッシュ可能な8点セルを備えています。iOSおよびipadOSのアクセシビリティAPIであるAxBrailleMapと連携し、Voiceoverが検出したイメージを点図としてグラフィックス領域へレンダリングします。テキスト情報はグラフィックスとは別にテキスト領域へ出力されます。

The Dot Pad: The Full Screen Tactile Display for the Blind - CSUN Conference 2022 Session Details

Dot Pad ― The first tactile graphics display for the visually impaired. (dotincorp.com)

Dot Pad Developer Center (dotincorp.com)


02. Graphiti Plus by Orbit Research


60×40、合計2,400の触角ピクセルを備えた点図ディスプレイ。リアルタイムにリフレッシュ可能なそれぞれの触角ピクセルの高さは調節可能でグラフィックスの微妙なトーンを触角として表現できます。スタンドアロンの点字メモ機として動作するほか、パソコンやスマートフォンなどと接続し対応するスクリーンリーダーと連携したり、HDMIで入力した映像を触覚グラフィックスへ変換することも可能です。タッチインターフェイスによりグラフィックスの描画などにも対応しているようです。

Graphiti Plus® – Interactive Tactile Graphics and Braille Computer – Orbit Research

Orbit Research Introduces the Graphiti Plus Interactive Tactile Graphic and Braille Display - EIN Presswire (einnews.com)


03. Orbit Speak by Orbit Research


コンパクトな合成音声ベースの点字メモ機。パーキンススタイルの点字入力キーボードを備え、内蔵アプリケーションを用いたメモの読み書きに加え、パソコンやスマートフォンとの接続機能も持ちます。

Orbit Speak – Speech-based Braille Notetaker – Orbit Research

Orbit Research Introduces the Orbit Speak Notetaker – Orbit Research


04. Polly by American Printing House


Annie(過去記事)で知られるインドThinkerbell Labsと共同開発された点字学習デバイス。標準サイズの6つの点字セルと大きなサイズの2つの点字セル、そしてパーキンススタイルの点字入力キーボード、音声出力などを備え、ゲーム感覚で点字を学ぶことができます。

Polly: Gaming the Way to a Braille Display - CSUN Conference 2022 Session Details

Introducing Polly! | American Printing House (aph.org)


05. electronic braille-ready format(EBRF) by American Printing House


APHとHumanwareが共同で開発中の新しいファイルフォーマット。点図ディスプレイの登場を見据え、主に教育分野において触覚グラフィックスや複数行の点字表示を含んだインタラクティブな視覚障害者向け電子教科書の標準形式を目指しています。

Braille Dots Serving 21st Century Needs - CSUN Conference 2022 Session Details

Research in Braille and Tactile Graphics | National Network for Equitable Library Service (NNELS)


06. Versa Slate by Overflow Biz, Inc.


紙を使わない点字板。20セル×4列の点字セルを備えており、通常の点字板と同じ感覚で点字を打ち、ボタンのプッシュで簡単に消去することができます。点字の読み書き練習や一時的なメモなどでの活用が主な用途として考えられているようです。

Versa Slate Paperless, Erasesable Braille Slate & Stylus : A. T. Guys, Your Access Technology Experts (atguys.com)

overflow (imweb.me)


07. Braille PAD by4Blind


1,850の触角ピクセルを搭載した、Linuxベースの8インチ触角タブレットです。フラッシュカードに保存された画像やテキストを点図および点字としてレンダリングするほか、内蔵されているカメラで撮影した写真を瞬時に触角グラフィックスへ変換します。

Braille PAD (4blind.com)


08. insideONE + by Insidevision Inc


Windows 11を搭載した点字タブレット。タッチパネルと32セルの点字ディスプレイを備えています。Windows 11で動作するデバイスとしては他にもElBrailleという点字メモ機もあるようです。

insideONE + - Windows 11 Braille Tablet - Power is in Your Hands - CSUN Conference 2022 Session Details

insidevision | Produits Braille


09. Bonocle by Bonocle Inc.


かなり前から話題になっていたBonocleが今春発売されるようです。これは単一の点字セルを備えたスマートフォン向け周辺機器で、バンドルされたアプリケーションと組み合わせて活用するようです。単一点字セルでどのような体験ができるのか興味津々です。

Explore Bonocle: One Braille Cell, Endless Functionalities - CSUN Conference 2022 Session Details

Bonocle – The Braille Entertainment Platform


10. Envision Glass by Envision


Envision Glass(過去記事)が大幅なアップデートを発表しました。OCRによるテキスト認識精度と文脈解釈によるドキュメント読み取りの向上、追加言語のサポート、Cash Readerとの提携による通過認識機能などが追加されています。またサードパーティー製アプリの組み込みが容易になり、例えばナビゲーションなどの用途への活用も検討されているようです。個人的にはnavilensが使えるようになって欲しいですね。

#CSUNATC22: Envision's Glasses Gain New Smarts with OCR Improvements, New Languages, Currency Recognition - Blind Bargains

Updated Envision smart glasses add improved OCR, new languages, third-party app support | ZDNet

Assistive smart glasses boast improved accuracy recognition and document guidance - AT Today - Assistive Technology


2022年3月15日火曜日

韓国Dot Incなど、画像認識AIによる物体識別プラットホーム「Dot Go」発表。認識結果からアクションをトリガーし視覚障害者の行動を支援。

※2022/5/18追記:Dot Go Assistantが正式にリリースされました。



「Dot Watch」などの視覚障害者向け機器の開発で知られる韓国のスタートアップDot Incorporationは、Serviceplan Koreaなどと共に、視覚障害者向けの新しい画像認識プラットホーム「Dot Go」を2021年秋に発表しました。

これは画像認識AIとLidarスキャナにより、スマートフォンで撮影した写真からオブジェクトを識別し、物体までの距離と共に音声で視覚障害者へ伝達するシステムです。

Dot Goが既存の物体識別アプリと異なるのは、認識したオブジェクトに対し様々なアクションを「「if this, then that」のルールに従い実行できるという点にあります。

活用例として、美術品を識別したらWikipediaの該当ページを開いたり、「止まれ」の交通標識を認識したらスマートフォンの振動で注意を促す。バス停を見つけたら時刻表を自動的に読み上げるといった用途が示されています。


これらのアクションは、ユーザー自身で「プリセット」として自由に追加・カスタマイズでき、他のユーザーと簡単に共有することも可能です。

またプリセットはサウンドや振動といったスマートフォン内部での処理だけでなく、スマートホームなどのIOT機器やウェアラブル機器といった外部デバイスの制御も可能とのこと。

つまりこれはDot Goを活用すれば画像認識を応用した家電や歩行ナビゲーションデバイスなどが短時間かつ低コストで開発可能であるということを意味します。


またベータ版アプリのインストラクションによるとDot Goでは「ライブラリ」(画像認識に必要なデータセット)を、ユーザーの地域や使用目的に合わせて組み合わせることが可能であるようです。

従来の画像認識アプリでは、用いられているデータセットが固定されているため、アプリや使用する状況によって認識精度がまちまちでした。

複数のデータセットを組み合わせることができれば、用途に応じた最適な結果を得られる可能性が高まりますし、新しくリリースされたデータセット(例えばWoven Planetらによる屋外ナビ向けデータセット[過去記事])にも比較的容易に対応できると考えられます。


Dot Goについて、Dot社は単なる物体識別アプリではなく、視覚障害者の生活と行動を支援することを目的としたプラットホームとして設計されていると述べています。プリセットやライブラリによるカスタマイズ性と、外部デバイスやサービスとの連携といった拡張性の高さがDot Go最大の特徴と言えるでしょう。あとはいかにして高品質なデータセットが使えるか、ですね。


現在iPhone用アプリをリリースに向けテスト中ですが、並行して世界中の障害者支援組織とのパートナーシップも進められています。

すでに南米ではBorn2Globalセンターと米州開発銀行グループからの資金援助を受け、インクルーシブ旅行サービスWheel the Worldとのコラボレーションによる視覚障害者向け移動サービスを2022年春のローンチをめざして準備中とのことです。


年末にも予定されていた個人向けDot Goアプリのリリースはやや遅れているようですが、動作環境(Lidarを搭載したiPhone)を所有していればTestFlightからテストに参加することもできます。私のiPhone 7はLidar非搭載なのでむりでした残念です。

従来の物体認識アプリでは(精度はともかく)物体の名前や距離は教えてくれるものの、そこから先はユーザーの判断に委ねられることが多く、実用性という意味では物足りない印象でした。

オブジェクト認識からアクションをトリガーするというDot Goのアイデアは、精度が確保され、かつ適切に動作するのであれば視覚障害者の行動を大きく支援する可能性を持っていると言えるでしょう。使い道を想像するだけでも、なかなか夢が広がります。


参考:Dot Go: Serviceplan And Dot Incorporation Develop First Customisable Object-Recognition Platform For The Visually Impaired – Marketing Communication News (marcommnews.com)


2022年3月14日月曜日

[ゲーム] アクセシビリティ関連記事クリッピング(2022/3/14)

※前回の記事はこちら


■第2回Video Game Accessibility Awardsがオンラインで開催され、9つの部門の受賞作品が発表されました。Halo Infinite、Guardians of the Galaxy、Horizon 5、Ratchet and Clank: Rift ApartといったAAA作品に混じり、Before Your Eyesといったインディー作品も受賞しており、ゲームアクセシビリティの広がりを感じさせます。

Video Game Accessibility Awards 2021 - All the Winners - IGN


■2021年のゲーム・アクセシビリティ総括も一区切りということで、これまでのアクセシビリティを含むアワード結果と総括記事をまとめてみます。

Can I Play That? Accessibility Awards 2021 ― The Winners

The Game Awards 2021: Here's the Complete List of Winners | Digital Trends

PS.Blog Game of the Year 2021: The Winners – PlayStation.Blog

#総括記事。

The 2021 video games that pushed accessibility farther - Polygon

Shacknews Outstanding Achievement in Accessibility of 2021 - Ratchet & Clank: Rift Apart

How gamers want to create better, safer spaces online in 2022 - CNET

2021 was gaming accessibility’s best year – can 2022 outdo it? | PCGamesN


■2022年3月23日に開催されるGame Developers Conference(GDC) 2022合わせ表彰される、Game Developers Choice Awards(GDCA)で、ゲーム業界に貢献した二人の人物に対し特別賞が授与されることが発表されました。「ドラゴンクエスト」を世に産み出した堀井雄二氏にLifetime Achievement Awardが、そして米国の障害ゲーマー支援組織AbleGamers charityのシニアディレクターであるSteven Spohn氏にAmbassador Awardが授与されます。

Steven Spohn to be honored with Ambassador Award at GDCA 2022 | Shacknews


■Xboxアクセシビリティ・ディレクターであるTara Voelker氏による、ゲームとスクリーンリーダーにまつわる興味深いTwitterスレッド。なぜTTSを実装したゲームが少ないのか、そもそもPCのスクリーンリーダーとゲームの音声読み上げはどう違うのか。TLOU2ではReadSpeakerによる音声読み上げエンジンが採用されていますが、ゲーム内テキストに逐一音声を割り当てることでスクリーンリーダー「風」の音声読み上げを実現させているなど。ゲームにTTSを実装させるための技術的な課題が語られています。


■2021年11月9日に発売されたXbox/PC向けレーシングゲーム「Forza Horizon 5(Playground Games)は、2022年3月1日のアップデートで以前から予告されていた、手話(ASLお呼びBSL)をゲーム全体のカットシーンへ追加しました。聴者による音声言語の書き起こしである字幕に対し、ロウ者の第一言語である手話を新しい言語としてゲーム内に導入したという意味で、非常に画期的な取り組みと言えます。

Forza Horizon 5 introduces sign language support throughout in-game scenes - Stories (microsoft.com)

Sign Language Support Comes to Forza Horizon 5 - YouTube

Forza Horizon 5 sign language update supports over 100 in-game scenes (caniplaythat.com)

Playground Games on the Forza Horizon 5 Sign Language Feature (caniplaythat.com)

'Forza Horizon 5' devs reveal how 'Last of Us 2' inspired a groundbreaking feature (inverse.com)

How Playground Created Forza Horizon 5’s Groundbreaking Sign Language Support - IGN

Deaf / HoH Game Review – Forza Horizon 5 - Game Accessibility Nexus


■2022年2月25日に発売されたPlaystation/Xbox/PC向けオープンワールドARPG「エルデンリング(フロム・ソフトウェア)」のアクセシビリティ・レビューが出ています。いわゆる「ソウル系」と呼ばれる高難易度シリーズの最新作ですが、予想通り難易度とアクセシビリティにまつわる喧々諤々の議論が交わされています。ただ前向きな議論は良いのですが、アクセシビリティ支持者に対し一部のコアゲーマー、現状の作品を変えたくないゲートキーパーと呼ばれる人々からの攻撃が見受けられるなどトホホな事象も発生しているようで残念です。あからさまに排除するような罵声は頂けませんね。

また近年のAAA作品としてはアクセシビリティ・オプションの欠如(中でもディスプレイやサウンド周り)が指摘されています。その一方でソウル系作品としては、特に運動に障害のあるプレイヤーにとっては完全ではないが比較的アクセシブルなゲームデザインとなっているという意見もありました。しかし全体としてはアクセスできないゲームというのが現時点で大方の評価のようです。

#アクセシビリティ・レビュー

Elden Ring ― Lacking Accessibility, Unintentional Barriers, Land Jellyfish (caniplaythat.com)

Elden Ring Accessibility ― Menu Deep Dive (caniplaythat.com)

Elden Ring director talks about the game's difficulty and studio identity (caniplaythat.com)

Elden Ring Review: Simply Wondrous | Elden Ring (gameskinny.com)

For The Physically Disabled, Elden Ring is the Most Accessible Souls Game Yet (fanbyte.com)

#難易度に関する議論。

What would an accessible Souls game look like? • Eurogamer.net

Disabled Gaming Advocate Faces Backlash For Claiming Elden Ring's Difficulty Is An Accessibility Issue - Bounding Into Comics

Here's a great video offering a different perspective on Elden Ring and 'difficulty' (mobilesyrup.com)

The debate over 'Elden Ring's' lack of pause is getting heated (inputmag.com)

Gamers Unlock Elden Ring’s Secret Hardcore Mode by Playing with a Disability - The Squeaky Wheel (the-squeaky-wheel.com)

Elden Ring Easy Mode Isn't Happening on PS5, PS4 - Push Square

Elden Ring’s difficulty isn’t the problem | PCGamesN


■2022年3月4日に発売されたPlaystation向けカーシミュレータ「グランツーリスモ7(Sony Interactive Entertainment)」の詳細なアクセシビリティ・レビューが掲載されています。Can I Play That?のスコアは10点中7.5点。特に聴覚・ロービジョ向けのオプションが充実していますが全盲だとプレイは難しそうです。

Gran Turismo 7 Accessibility Review ― Can I Play That


■発売日などは未定の「STAR WARS ECLIPSE(Quantic Dream)」の音声解説付き予告動画が公開されました。Ubisoftのように音声切り替えで有効にするものではなく、音声トラックに解説を埋め込んだ動画が言語ごとに用意されています(日本語はなし)。ゲーム本編の情報がまだ公開されていないため、アクセシビリティがどれだけ考慮されているのかは想像するしかありませんが、全体の姿勢として多少なりともインクルージョンは意識しているのかな?と解釈しておきましょう。

Star Wars Eclipse gets audio described trailers in various languages (caniplaythat.com)


※このブログのゲーム・アクセシビリティに関する記事はこちら

また一時期書いていたTopicsでも頻繁にゲーム・アクセシビリティに触れていますのでこちらもどうぞ。


2022年3月10日木曜日

Microsoft Edgeに画像説明取得機能が追加。AIで解析した画像に含まれる物体の概要、および抽出したテキストをスクリーンリーダーで読み上げ。

MicrosoftはスクリーンリーダーでWebをブラウズするユーザーに向け、同社が開発するChromiumベースのWebブラウザ「Microsoft Edge」に、画像の説明を取得する機能を追加しました。

この機能は画像認識AI(おそらくAzure AI)を用い、Web上の画像にどのような物体が含まれているのかを解析し説明文を生成、また画像に含まれるテキストを抽出して画像のAlt(代替テキスト)を置き換える機能です。

これにより画像を目視で確認できないスクリーンリーダーユーザーが、代替テキストが含まれていないWeb画像の意味を(ちょっとだけ)理解できるようになる(かもしれません)。確認したMicrosoft Edgeのバージョンは99.0.1150.36(macOS版)です。


スクリーンリーダーを用いてMicrosoft Edge上の代替テキストが入っていないイメージをフォーカスすると、

「不足している画像の説明を取得するには、コンテキスト メニューを開きます。 ラベル付けされていない画像」

と読み上げられます。

画像説明を取得するには、


  1. 画像のコンテキストメニューを開く。
  2. 「Microsoft から画像の説明を取得する」を開く。
  3. 「常に表示」もしくは「一度だけ」を実行する。


これで画像にフォーカスすると、取得された画像説明が読み上げられます。「常に表示」を選ぶと、以降は設定から無効にするまで自動的に画像説明が取得されるようになります。画像説明がうまく取得されない場合は、その画像のコンテキストメニューから、画像を新しいタブもしくは新しいウィンドウで開くことで取得される可能性が高くなります。ただ画像の内容によっては説明文の生成に失敗する場合もあるようです。


またEdgeの設定でこの機能を有効/無効にすることもできます。少なくとも私のMacではEdgeのコンテキストメニューがうまくVoiceoverで操作できない場合があったのでこちらの方法で設定しました。

Edgeの設定を開き「説明」で検索すると

「スクリーン リーダー用に Microsoft から画像の説明を取得する」

というチェックボックス項目がヒットします。このオプションにチェックを入れることで、画像説明が自動的に取得されるようになります。


では実際にどのような感じで画像説明がつくのでしょうか。試しにずいぶん昔にストックフォトで購入した東京タワーのお写真の画像ファイルをMicrosoft Edgeで開いて認識させてみました。


たぶん東京タワーが写ってる画像。

Edgeはこのような説明文を返してきました。

「次のようです: a large tall tower with a sky background with 東京タワー in the background」

現状説明文は英語になるようです。翻訳すると「東京タワーと空を背景にした、大きくて高いタワー」という感じでしょうか。ちょっと文法がアレですがちゃんと東京タワーは識別してくれました。固有のランドマークとしては他にもスカイツリーやレインボーブリッジなんかも認識します。富士山はダメでした(山と認識)。全体的な正解率はそこそこ高いという印象です。

また物体認識のほか、画像に含まれる文字列もOCRにより説明文として出力されます。スクリーンショットなんかを放り込むとどのような文字列が含まれているかが分かります。ちなみにテキストの認識は日本語にも対応します。


画像認識AIによる代替テキスト生成がどこまで実用的であるかは議論の余地はありますが、個人的には情報ゼロ状態から比べると1万倍マシだけど代替テキストの代わりにはならないよねという印象です。まあヒントというか手がかりくらいには役立つでしょう。AIがコンテンツの文脈から画像を説明できるくらいに進化すれば、少しは実用的になるのかもしれません。今後に期待です。

2022年3月8日火曜日

ヘレン・ケラーが生涯にわたり愛用した触時計。

Helen Keller's Watch.

画像引用元


この触時計は1892年、ヘレン・ケラーが12歳のときにアレキサンダー・グラハム・ベルの家で開かれた誕生日パーティーで、元外交官であるジョン・ヒッツからプレゼントされたものです。ヒッツはグラハム・ベルがワシントンに設立した聴覚障害者支援施設「the Volta Bureau」の管理人でもありました。


1860年頃にスイスで製造されたこの機械式の懐中触時計。ケースの外周には、文字盤の時刻の位置に対応したピンが配置されています。時針・分針とピンに触れることで、時計の盤面を見ることなく、おおよその時刻を知ることができるという仕組みです。

触時計と聞くと視覚障害者専用というイメージがありますが、外交官や大使の間では、重要人物との謁見やスピーチの最中でも、視線を時計に移したり音を鳴らしたりすることなく時刻を確認できるため、しばしばこのような触時計が用いられていたそうです。

ケラーはこの触時計をとても大切にし、生涯にわたり愛用しました。

現在この時計は、米国ワシントンにあるスミソニアン博物館の一部である国立アメリカ歴史博物館へ収蔵されており、オンライン・ギャラリーで展示されています。


さて、この時計には一つのエピソードがあります。

1952年1月17日、ニューヨークを訪問した71歳のケラーは、コスモポリタン・クラブから利用したタクシーの中にこの時計を入れたスーツケースを置き忘れてしまいました。同日付けで届出された紛失通知が、American Foundation for the Blindが運営するHelen Keller Archive保存されています。

(抜粋訳)ヘレン・ケラーより。グリーン・アリゲーターのスーツケース(レインカバー付き)。衣類と貴重な時計(家宝)が入っています。木曜日の午後、グランド・ジェニアルのタクシー内で紛失。(抜粋訳ここまで)


この出来事はニューヨーク・タイムズをはじめ様々なメディアで取り上げられ、報道をみたニューヨーク質店組合の協力により、紛失の数日後にニューヨーク市内にある店舗へ20ドル(現在の価値で役211ドル/計算元)で質入れされていたことがわかったそうです。

他の紛失物は見つかりませんでしたが、時計はめでたくケラーの手元に戻りました。


この顛末を報じた新聞記事もHelen Keller Archiveで公開されているほか、ニューヨーク・タイムズのアーカイブ記事や当時のニュース音声も残されています。

紛失届に「heirloom)(家宝)」と表現していることからも、ケラーにとって長年の間使い続けてきたこの触時計が、いかに大切なものであったかが分かるエピソードです。


近年では視覚障害者の間でも振動で時刻を知らせてくれるスマートウォッチやボール式の触時計などが人気ですが、針に触れるタイプの触時計も趣がありまだまだ魅力的に感じます。もっといろいろなデザインから選べるといいんですけどね。

このケラーの触時計、復刻されれば視覚障害者に限らず、結構人気が出るような気もします。一生使い続けたくなるような時計に、一度は出会ってみたいものです。


支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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