2019年3月11日月曜日

「音声コード」の現状についてあれこれ調べてみた。


視覚障害者に情報を伝えるにはさまざまな工夫が必要だ。
ネット接続環境があればパソコンやスマートフォンを用いることで情報取得の選択肢は広がるが、視覚障害者の多くを占める高齢者の中で日常的にネットを利用しているケースは多くはない。パソコンやスマートフォンはおろか、自分専用の携帯電話も未所有という話もよく聞く。

そうなると、視覚障害者が独立して(ここが重要)得られる情報の伝達手段は一気に少なくなってしまう。
解決策として考えられるのは、点字書類や音声/デイジーCDを送付する方法があるが、点訳・音訳にコストを要するし、情報のタイムラグも発生しやすい。それに手続きなど個別情報の伝達にも使えない。
そこで考案されたのが「音声コード」と呼ばれる2次元コードを用いる方法だ。
通常の印刷物にこのコードを印刷しておき、視覚障害者がそのコードを専用機器やスマートフォンなどで読み取れば、コードに含まれる内容を音声で聞けるというものだ。

だがしかし、個人的には音声コードは存在こそ知ってはいるがそこまで普及している印象は感じていな買った。どの書類にどのような音声コードが記載されているかも聞いたことがない。

いったいどういうことだろう。
音声コードってちゃんと活用されてるの?
という疑問がふつふつと湧いてきたので視覚障害者を対象にした音声コードの現状について調べてみルことにした。
今回はあくまでも情報を受け取る視覚障害者としての視点に絞っている。


主な音声コードは4種類

ある


読み取り機器/活字文書読み上げ装置器(オフライン)
収録可能な文字数/約800 ~ 1,000文字(サイズにより異なる)
音声読み上げ/活字文書読み上げ装置の内蔵音声

2003年に考案された音声コード。自治体を中心に採用されている。
SPコードを読み取るには「活字文書読み上げ装置」が必要。現在、Windowsパソコンと接続して使う「スピーチオプラス」と、単独で読み取る「テルミー」が購入可能。これらの機器は視覚障害2級以上であれば自治体から購入補助を受けられる。

補助対象になっていることもあり、視覚障害者の間では一応のスタンダードな規格であったが、近年ではスマートフォンに対応した「Uni-Voice」が採用されることが多くなっているようだ。

2.Uni-Voice
(ユニボイス)

読み取り機器/スマホアプリ、活字文書読み上げ装置(オフライン)
収録可能な文字数/約800文字
音声読み上げ/スマホのスクリーンリーダーを使用
(活字文書読み上げ装置の場合は内蔵音声)

JAVIS(日本視覚障がい情報普及支援協会)が策定した音声コード。SPコードと互換性を持たせつつ、多言語対応など機能が強化されている。
スマートフォンに専用アプリをインストールして利用する(視覚障害者向けのアプリはiOSのみ)。また基本的な仕組みはSPコード(の一部機能)と同等なので、Uni-Voiceの音声コードはSPコード用の活字文書読み上げ装置でも読み取ることができる。ただしUni-VoiceのアプリでSPコードを読み取ることはできない。このあたりは少しややこしい。

日本年金機構やマイナンバーカードの通知書、公共料金の通知書などで採用されるようになってきている。近年では「音声コード」と言えばUni-Voiceのことを指すことも増えてきているようだ。

3.Voiceye
(ボイスアイ)

読み取り機器/スマホアプリ(オフライン)
収録可能な文字数/約1,500文字
音声読み上げ/スマホのスクリーンリーダーを使用

韓国で開発され広く普及している音声コード。日本語でも利用できるが、一部の観光施設で採用される程度で日本での活用事例はまだ少ない。
収録できる文字数はUni-Voiceのほぼ倍、QRコードのように適当にスマホをかざすだけで読み上げてくれるなど機能面では優れている。またスマホアプリという特性上、スケジュールや連絡先アプリと連携させたり、ネット接続して様々な情報を取得できるなど便利な使い方も可能。
反面、読み取り専用端末が用意されていないのでスマホを持っていないと使えないというデメリットがある。


読み取り機器/スマホアプリ(ネット接続が必要)
収録可能な文字数/最大約5,000文字
音声読み上げ/スマホのスクリーンリーダーを使用

QRコードを応用したサービスで、基本的には文字コンテンツの翻訳をメインにしているが、音声読み上げ機能と組み合わせれば視覚障害者用の音声コードとしても使用できる。コードそのものはQRコードなので専用のアプリを必要とせず、標準のカメラアプリや好みのQRコードリーダーで利用できるのが特徴。
読み取りにはネット接続が必要。その分文字数の制限が緩くコンテンツの書き換えも自由という利点もある。


視覚障害者に適した音声コードの条件を考えてみる


1.オフラインで使える端末が用意されている事

特に高齢の視覚障害者はネット接続環境やスマートフォン・タブレットを持っていない世帯が少なくない。そのため音声コードはスマートフォンだけでなく、オフラインで使える専用の端末が用意されている必要がある。

現在の活字文書読み上げ装置は音声を再生するだけだが、ディスプレイを備えた端末なら文字を表示させて拡大したり色を反転させるなどロービジョン向けの支援機能を提供できるだろう。読み取りアプリをプリインストールしたAndroidタブレットといったソリューションもあり得るかもしれない。

2.簡単にスキャンできること

SPコードとUni-Voiceに共通しているのは、印刷条件や読み取りがシビアであるという点。せっかく音声コードが印刷されていても読み取れないといった事態も発生している
これらのコードにはQRコードのようにコードを識別するマーカーが存在しないため、コードの位置を正確にスキャンしなければならず、使い勝手はよろしくない。その上印刷物の状態によっては誤認識も発生しやすいという。
この問題に関してはこちらの記事で詳しく検証されているのでぜひご一読を。

一方VoiceyeやQRコードは検出マーカーが用意されているので、上下逆さまだったり傾いていても正常に内容を読み取ることができる。この使い勝手は視覚障害者にとってはかなり重要に思える。

3.正確・安定して読み上げられる事

アプリを利用する音声コードでは、音声読み上げにスマホの読み上げ機能(スクリーンリーダー)を使うものが多い。だが現状のスマホの音声読み上げは必ずしも完全ではない。もちろん、原稿を作成する際に読み間違いやすい漢字をひらがなにするなど工夫することもできるが、スクリーンリーダーの種別によっても読み上げ方が変わる可能性がある。
どの環境のユーザーにも同一の情報を提供するには、音声合成は読み取りクライアント側で行うのがベターだろう。


結論は出ないまとめ


という漢字で視覚障害者にとっての音声コードについてあれこれ調べてみた。

現状主流になりつつあるUni-Voiceは活字文書読み上げ装置と互換性を持たせるため、コードそのものの設計に古さを感じてしまうのは否めない。読み取り時の使い勝手はコードの横にマーカーを加えるなど対策はありそうだが、コードに含められる文字数が少ないとか印刷要件の厳しさ、エラーの多さなどは解決するのは難しいかもしれない。

Uni-VoiceのベースとなっているSPコードが開発された当時と比べ、コードの認識や文字エンコード、音声合成、プライバシー保護など音声コードに応用できる技術は飛躍的に進化している。そろそろ全く新しい音声コードが出現しても良さそうな気もしなくもない。もちろんどこかで研究開発は進められてはいるのだろうけれど。
そう考えると「活字文書読み上げ装置」の存在は悩ましく思えてくる。専用端末が最新技術の普及を妨げてしまっている漢字。今後は一層障害者にとってテクノロジーが重要になってくるのは間違いない。時代に取り残されないよう、定期的なリフレッシュは必要ではないだろうか。

あと運用の面で言えば、音声コードの存在自体がしゅうちされていないと感じる。筆者も、どこにコードが記載されているのかさっぱり知らなかった。音声コードそのものはとても可能性を持つ技術だけに、もったいない気がしてしまう。

この際、本気で「使える」音声コードを策定して、公共の書類だけでなく商品パッケージや自動販売機などに一気に採用させれば、視覚障害者の生活を劇的に改善できるのになあと思ったりするのだけど、どうでしょうかね。

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