2020年5月14日木曜日

Covid-19の統計グラフを「音」で感じられるWebサイト「A11Y COVID-19」。


Covid-19にまつわる情報において頻繁に目にするキーワードの一つに「曲線の平坦化(Flattening the Curve)」というものがある。
ウィルス感染者数などのデータをグラフにした際、その曲線を平坦、つまり緩やかにしていくことで医療資源の枯渇リスクを遠ざけましょう、という認識で多分大きくは間違ってないと思う。
報道や各種期間からの発表の中に、Covid-19の様々な情報を視覚化したグラフが掲載されていることに気がついている方も多いはず。これらのグラフを見れば表現されている曲線の形で、これまでの対策の効果や今後の流行傾向がある程度予測できるというわけだ。

だがこのグラフというものは極めて視覚的な表現形式であり、視覚に障害を持つ人々にとってはアクセシブルではない。Webに掲載されている大抵のグラフは画像形式になっており、スクリーンリーダーでアクセスする人々に対して十分な情報提供が行われていないというのが現状だ。

画像に含まれている情報を見えない・見えにくい読者に伝える手段としては、イメージの内容をテキストとして記述する「代替テキスト」が真っ先に挙げられる。スクリーンリーダーを用いれば、画像にフォーカスしたタイミングでその説明文を読み上げ情報を得ることができる。しかししこと「形」や「色」に重要な意味が含まれるグラフやチャートを的確に言葉で表現するのはとても難しい。
かといってグラフの元となる数値をそのまま代替テキストとして記述すれば良いかといえばそれもベストとはいえない。音声で読み上げられた数値をもとにグラフの形をイメージするには、読み取る側にそれなりのスキルと訓練が必要になるだろう。ましてやデータの数が膨大になってしまうともうお手上げである。
まあグラフの傾向をある程度言葉として説明することは可能かもしれないが、やはりグラフの形状を直接確認するのとしないのとでは受け取れる情報量に大きな差は出てしまうことは否めない。今回のパンデミックのような状況では情報格差が各個人の行動にも大きく影響しかねず、それが感染予防対策に悪影響を及ぼす可能性もある。情報アクセシビリティの確保は当事者のためだけでなくすべての人々の利益につながるというお話。

グラフをアクセシブルにする手段としては先述のような代替テキストや点図ディスプレイなどの触覚を用いる方法が考えられる。
そして「Sonification(可聴化)」も、そのような手段の一つ。これは要するにイメージを「音」に変換して表現しようというものだ。Sonificationは経済チャート天文学などグラフやチャートを頻繁に用いる分野ではすでに活発な研究が進められている技術のようだが、Covid-19騒動でグラフの重要性に注目が集まる中、視覚障害者への情報伝達手段としてにわかに脚光を浴びている模様。

A11Y COVID-19」は、Sonificationを用いてCovid-19の流行グラフを音声化し、視覚障害者にできるだけフレッシュな情報を提供することを目的としたプロジェクトだ。
開発したのは米国Smith-Kettlewell Eye Research Instituteのリハビリテーション工学研究センターで、デジタル・アクセシビリティに関する研究を行っているGiovanni Fusco氏。

このサイトではジョンズホプキンス大学から提供されるCovid-19関連データをグラフ化し可聴化した上で公開している。現在提供されているのは、米国、イタリア、ニュージーランド、スウェーデン、中国、そして世界全体の統計データ。なおデータは1日1回、23:59(UTC)頃に更新されるとのこと。

各国のページには最新の統計データと3種類のグラフが掲載されている。
それぞれのグラフにある再生(Sonify)ボタンをクリックすることでグラフの曲線形状をサウンドとして聞くことができる。具体的には音程の高さ/低さで数値の変化を、音程が変化するスピードで曲線の傾きを表現する。このサウンドを聞けば、グラフを眼で確認できなくてもある程度曲線の形をイメージすることができるだろう。
なお「Enable Stereo Panning」にチェックを入れると、音声が左からみぎに移動するエフェクトが有効になる。ヘッドホンなどを使えばよりグラフの曲線を想像しやすくなる。

もちろんこのサイトの情報だけでCovid-19の状況を把握することは難しいが「曲線の平坦化」の概念を理解する助けになるだろう。この経験を持って他の情報に触れることで、より理解度というか納得度が深まるような気がする。

Covid-19に関してはまだ未知の部分が多く、統計データもどれだけ事実を反映しているかは誰にもわからないというのが実際のところだろう。それでも障害のあるなしで得られる情報に格差があることの言い訳にはならない。すべての人々に対して平等かつ丁寧な情報提供が行われることを望んでやまない。ひいてはそれがすべての人々を守ることになるはずだ。

おまけ。
以下、A11Y COVID-19に掲載されているデータの概要をざっくりと紹介。

・「Brief」で確認できるデータ(数値のみ)。

Active cases:
現在の感染者数
Total number of COVID-19 infections since the start of the pandemic:
パンデミック発生からの累計感染者数
Total number of recoveries registered since the start of the pandemic
パンデミック発生からの累計の回復者数:
Total number of deaths reported since the start of the pandemic:
パンデミック発生からの累計の死者数

・「Plot」で確認できる情報(グラフ)

Plot - Active Cases of COVID-19(罹患者数の変化曲線)

現在Covid-19に罹患している患者数をグラフ化したもの。
米国やイタリアではある期間から一気にグラフが上昇し(急速に音程が上がる)、そして現在もまだグラフが上昇し続けていることがわかる。
一方、中国やニュージーランドでは新たな感染者数が回復者数を下回っているため、ピークを超えてからはカーブが下降して(音程がさがって)きている。

Plot - Total Confirmed Cases of COVID-19(総感染者数の増加曲線)
Plot - Total COVID-19 Deaths(総死者数の増加曲線)

この2つのグラフはパンデミック発生から現在までの累計感染者数と死者数の増え方を示している。そのためグラフが下降することはない。
注目するポイントは「音程の変化スピード」で、音程の変化スピードが緩やかなほど曲線の平坦化が実現されていることを意味している。例えば米国やイタリアと比較すると、スウェーデンの曲線はかなり緩やかのように聞こえる。

なお米国と世界全体のページでは末尾に州ごと、国ごとのCovid-19統計データがテーブル(表組)で掲載されている。こちらは数値のみ。

参考:A11Y COVID-19

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