2018年8月29日水曜日

横断歩道と、関連支援テクノロジー


視覚障害者にとって、横断歩道は鬼門である


視覚障害者の単独外出には、実にさまざまな障壁が立ちはだかる。
できる限り安全な歩行をするためにも、歩行訓練を受けたり、歩行ルートを脳内マップに叩き込んだりするわけなのだが、どんなに準備万端で外出に臨んでもトラブルになるポイントがある。それが横断歩道だ。
なお本エントリーの内容は筆者(ほぼ全盲)の基準で執筆している。同じ視覚障害でも、見え方により不便に感じる部分は異なるだろう。

横断歩道を渡るには車道を横切らねばならないわけだが、ここにはまっすぐ歩くための目印が無い。横断する車道幅が狭ければまだいいが、4車線くらいの幅広だと、歩行ルートがズレてしまう危険性がある。ズレる方向次第では思い切り車道に出てしまい非常に危険。そのため歩行訓練ではズレる前提で、車道とは反対寄りに横断するように指導される。
結果、頭に描いていたルートと実際のルートが乖離してしまい、それをリカバリーするために大きなタイムロスを余儀無くされてしまう。まあそれくらいならまだいいが、下手をすると命の危険にも晒されるのが、視覚障害者にとっての横断歩道だ。


音響式信号機とエスコートゾーン


視覚障害者の道路横断を補助する仕組みとして真っ先に思い浮かぶのは、音響式信号機だろう。青信号になると「ピヨピヨ」「カッコーカッコー」言うアレである。これは信号が変わったことを認識できるだけでなく、対岸のスピーカーの音を聞きつつ、それを頼りに大きくコースを外れず安全に横断できるように設計されている。訓練すれば、これだけでかなり安全に横断できる。
しかし、この信号機は騒音トラブルになりやすいため、音が鳴る時間帯が制限されていたり、ボタンを押さないと動作しないものが結構多い。単独では押しボタンの位置がなかなか見つけられないことも多く難儀してしまう。
なお対応する信号機(音声標識ガイドシステム)で青信号の時間を延長したり音響の制御ができる「シグナルエイド」という商品も販売されており、よく通るルートに対応信号機が設置されていレバ、導入を検討してもいいだろう。
音響信号の新規設置は道路を管轄する部署(自治体、警察)に申請するのだが、前述の理由で住宅地に近い場所では却下されるケースも多いようだ。

もうひとつ、視覚障害者の横断をサポートする設備がエスコートゾーン
これがあれば、幅広の横断歩道も白杖を使って確実に渡ることができる。
しかしこれ、なかなか見かけない。今後の普及を望みたいところだ。

なお、横断歩道の中でも難易度が高いのが「スクランブル交差点」。斜めに横断するには音響ありでも距離が長く、ほかの歩行者との接触リスクも高いため、慣れていないと2段階右折のように時間をかけて横断することも少なくない。


テクノロジーで安全な道路横断を


現状では音響式信号機がほぼ唯一の手助けではあるが、各所ではさまざまな支援技術の開発が進められている。
その一部をざっくり紹介しよう。

1.コンパスアプリを応用

いきなり自己流のお話で恐縮だが、
「振動コンパス」というiPhoneアプリを使い、「代替まっすぐ」歩くテクニックがある。
ちょっとコツが必要だが、明後日の方向へ歩いてしまうという失敗を防げる。
具体的な使い方はこちらのエントリーを参照していただきたい。

2.信号機の判別支援

視覚障害者が直面している問題の一つに、音響式ではない、または音響装置が作動しない時間帯での、信号の判別が困難、という点が挙げられる。
この問題を解決するために、主にスマートフォンを用いた歩行支援システムが研究されている。
具体的には、画像認識を使ったり、電波(おそらくBluetooth?)で信号機の状態を判別してスマートフォンに知らせる仕組み。シグナルエイドのように、青信号を延長する機能を持つシステムもあるようだ。
音響式信号機のように、対岸まで誘導してくれる仕組みは持っていないため、完全な代替システムではないが、原理的に導入コストが低いと予想されるため、実現性は高いと想像できる。

関連リンク:

3.ビーコンなどを用いた誘導システム

前述の技術をさらに一歩進め、信号機に設置されたBluetoothビーコンを用いて、信号機の状態を歩行しゃに伝えつつ、音声や振動で横断をナビゲーションするシステム。
カナダで実証実験が始まっている「Key2Access」がその一例。

他にもまだ実験段階だが、交差点や他の歩行者をカメラで捉え、画像認識で歩行者をナビゲートする手法も研究されている。画像認識ベースのシステムであれば導入コストも低く、既存交通システムへの影響も少ないため期待できるが、現段階ではビーコンや音響による誘導に比べ確実性が低いとのこと。今後新装学習モデルが進化していけば、信頼性も向上し実用的になるかもしれない。

関連リンク:

4.交差点の地面に仕掛けが

視覚障害者の横断をナビゲーションするもう一つの手法が、地面に何かしらの仕掛けを施し、それを辿って歩行する仕組み。
例えば横断歩道の塗料に特殊な材料を用い、スマート白杖で歩道のペイントをたどると振動してナビゲーションしたり、地面に埋め込んだ磁石に反応して神童する靴といった技術が応用できるかもしれない。
ただこのような技術は導入コストも高く、歩行者がわにも専用のデバイスが必要など課題は多そうだ。

関連リンク:


音響信号に代わるシステムの普及を


様々なアプローチで視覚障害者の横断を支援する取り組みが進められているが、ナビゲーションの信頼性とコストを考慮すると、信号の通知システムとエスコートゾーンの組み合わせが、現時点ではベターなのでは、というのが筆者の感想。ただ「Key2Access」のようなナビシステムが安定・低コストで実現すれば、そちらが本命になり得るだろう。
騒音などの諸問題で音響信号が設置できないケースが目立つ中、それに代わる技術の普及が急がれる。


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