2018年8月30日木曜日

AIRAで視覚障害者に「買い物の自由」を

視覚障害者の日常生活では、さまざまな「困りごと」が発生する。 電車に乗って出かけたい、届いた郵便物を確認したい、自分でお料理したい……など。 「買い物」も、その中の一つだ。 近年ではネットスーパーなどの食料品をWebから購入する手段が増えてはいるが、全ての視覚障害者がWebを操れる訳ではないし、やはりお店にふらっと出かけて並んでいる品物を選ぶ楽しみを体験したくなるもの。もちろん家族やヘルパーなどの援助を受けたり、店員のヘルプで買い物する方法もあるが、これもやはり「条件付き」の自由だ。 画像認識AIや屋内ナビゲーションで単独での買い物を支援する技術も開発されてはいるが、まだ実用には至っていないというのが現状。 米国で97の店舗を展開するスーパーマーケットチェーン「Wegmans」は、全ての店舗で「AIRA」による視覚障害を持つ顧客のサポートサービスの提供を開始した。 AIRAはスマートフォンやスマートグラスを介して視覚障害者と訓練を受けたサポートエージェントをつなぎ、さまざまな支援を遠隔で行うサービス。スマホやスマートグラスのカメラで撮影されたリアルタイム映像をエージェントが確認し、音声通話で映し出された物品を説明したり、目的の場所までのナビゲーションなどを行ってくれる。 Wegmansを訪れた視覚障害者は、AIRAアプリを手持ちのスマートフォンにインストールし、ゲストアカウントでログインする。これで店内のWi-Fi接続でAIRAのサービスを無料で利用できるようになる。家族や店員の助けが無くても、好きな売り場へ移動したり、鮮度の良い野菜やフルーツを一人で選ぶ…といったショッピングを楽しめるのだ。 AIRAのサービスは個人契約(有料)が基本であるが、CES 2018などのイベントでサービスをスポット提供したり、米国のいくつかの空港で無料サービスを開始している。スーパーマーケットへの導入はWegmansが初とのこと。 スーパーマーケットと聞くと日本人は狭くて商品が細かく並んでいるという風景をイメージしてしまうが、米国のスーパーは一般的に通路も広く、陳列されている商品も大量かつ生前としているため、AIRAのような遠隔サポートも行いやすい。ショッピングカートを使えばスマホを使いながらでも買い物を楽しめる。 細かい仕様は不明なので、あくまでも想像だが、Wi-FiやBluetoothによる屋内測位でユーザーの位置を特定し、エージェントが店内マップを元に商品棚へ案内するような仕組みもあるのかもしれない。 筆者個人の感覚としては、買い物は結構パーソナルな行為と認識しているため、人力サポートのAIRAを使いたいか?と言われると「場合による」という感じではある。 だが、自分の好きな時間に、確実なショッピングができる自由は、大きな進歩といっていいだろう。 米国でトップクラスのチェーンであるWegmansは他にも、薬局カウンターやレジで聴覚障害者のコミュニケーションをサポートする「Hearing loops」や、自閉症を持つ顧客のために、BGMなどを止める「Quieter Hour」を定期的に設けたり、託児所などの保育サービスもいち早く導入している。売上だけでなく、顧客満足度でも常に上位をキープしているのは、このような包括的サービスも影響しているのだろう。 このような試みは、これまで閉ざされてきた障害者のニーズを掘り起こし、その結果、企業のイメージだけでなく業績にも貢献している好例かもしれない。 むろんこのようなサービスが、そのまま日本で提供できるかはわからないが、支援技術を活かし、少しずつでも障害者の「困りごと」が解消される未来を期待したい。 関連リンク: ・Wegmans Becomes the First Aira-Enabled Supermarket Chain in the United States - Aira / Aira ・Wegmans launches app to assist visually impaired customers | Food Dive

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