2021年3月10日水曜日

[ゲーム] Street Fighter Vのモノラルサウンド問題に関する雑感。

2021年2月末、ゲームアクセシビリティ界隈でちょっとした騒ぎがありました。Capcomの人気2D対戦格闘ゲーム「Street Fighter V」のモノラルサウンド問題です。ことの顛末は以下の記事でどうぞ。


Latest Street Fighter 5 Patch Makes It Unplayable For Blind Players (thegamer.com)

Street Fighter V update makes it impossible for blind people to play | PC Gamer

ストリートファイターV、開発元のカプコンが目の不自由なプレイヤーでもプレイできるようにバグを修正すると発表 | NME Japan Gaming


最後の記事はちょっとタイトルに疑問がある気がしますが。

要するにアップデートにより、これまでステレオで再生されていた効果音がモノラルに固定され、音を頼りにプレイしていた画面を見ることができないゲーマーから落胆の声が挙がった、というお話。

Capcomからのリリースによると3月4日のアップデートで音声がモノラルになる不具合は解消されたとのこと。ひとまず安心、といったところでしょうか。


これで一件落着、とは思ったものの、見えないプレイヤーにとって今回のバグは大きな問題であった一方、あのリリースを読んだ大部分の「一般」ユーザーは、この修正をそこまで重要なものとは捉えていないでしょう。

このギャップに何かモヤモヤしたものを感じつつ、同時にこの一件でゲームアクセシビリティの「脆さ」についても考えさせられました。以下とりとめもなく。


Capcomは「サウンドを頼りにプレイするユーザー」の存在を認識している可能性はありますが、このリリースやツイートを読む限りステレオサウンドをアクセシビリティ要素の一つとしては位置付けていないというスタンスが透けて見えます。

事実SFVのステレオサウンドはステージによってギミックからの音がキャラクターの効果音を妨げるケースが多く、「見えないプレイヤーにとって遊びやすいステージのリスト」がまとめられているほどです。つまりSFVのサウンドはあくまでも演出の一つであり、アクセシビリティを高める目的では設計されていないと想像できます。


SFVに限らず、アクセシビリティを意図せず設計されたサウンドデザインが、結果的に見えないプレイヤーに恩恵をもたらすという作品の例は少なくありません。ですが逆にいえば無意識なだけにアップデートや続編でプレイアブルな状態がキープされる保証は得られないという、結構不安定な状況に立たされています。

修正はされましたが今回の一件はその事実を白日の元に晒したといえるでしょう。バグであればまだしも、ちょっとした仕様変更、例えば効果音の廃止やグラフィックの刷新で一部のプレイヤーが阻害されたとしても「演出の変更」という理由でスルーされる可能性も十分あり得ます。


そもそもStreet Fighter Vが見えないゲーマーにとって本当にアクセシブルな格闘ゲームであるか?と聞かれると、必ずしもそうではないでしょう。効果音がステレオで再生されることでキャラクターの位置を確認できることは重要で、これを実現している対戦格闘ゲームは少数です。ですが一方ユーザーインターフェイスにはナレーションが付けられていませんし、ゲージなど重要な情報は音声で提供されません。

あくまでもSFVは「結果的に(というか偶然に)ゲーム本編がプレイ可能」になっているという状況に過ぎません。

もちろん情報を収集し見えなくてもプレイ可能なゲームを発見し、あらゆる手法を駆使して挑んでいくという視覚障害コミュニティのパワーはエキサイティングではあります。ですが本来であればそのようなニーズをメーカーが救い上げ、対話を重ねつつ可能な範囲でアクセシビリティを向上させ担保していくことが理想でしょう。今回は画面を見ることができないケースですが、他の障害についても同じようなことがいえます。


2020年の「The Last of Us Part II」の登場やPS5やXbox Series X/Sのリリースでプラットホーム側がアクセシビリティに本腰を入れ始めている状況の中、サードパーティーとしてもアクセシビリティは無視できない要素となりつつあることは間違いありません。SFVがリリースされた当時から比べると、ゲームアクセシビリティを取り巻く状況は確実に変わりつつあります。

とはいえ現実的に考えると、リリースから長期間経過した作品にアクセシビリティオプションを「後付け」することは難しいかもしれません。ですが今後登場する作品に、開発の初期段階からアクセシビリティオプションを導入するよう、メーカーに働きかけていくことが業界のアクセシビリティに対する意識を変えるきっかけになるのではと思います。

そしてゲーム業界をインクルーシブにするためにはメーカーもそのような声に耳を傾けていく姿勢が求められてくるのではと思うのでした。


おまけ。対戦格闘ゲームの視覚アクセシビリティについては、この記事も興味深いです。見えないプレイヤーが様々な工夫でゲームにアクセスする様子の一端が窺えます。


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