2020年3月23日月曜日

視覚障害者の生活を楽しく便利に。「みずいろクリップ」体験記。

みずいろクリップを手に持った写真。

「みずいろクリップ」は、物体の色を調べる「色判別」と飲み物をどこまで注いだかを調べる「液面検知」、そして「音声タイマー」という3つの機能を併せ持った、視覚障害者に向けて設計されたコンパクトな電子デバイスです。開発・販売しているのは、香川県に拠点をおく株式会社Raise the Flag.

このような視覚障害者専用の電子デバイスは市場が狭いこともあり高価格になりがちですが、みずいろクリップは4,980円(税別)という比較的リーズナブルな価格設定となっています。
ただ後述しますが電池交換やアップデート方法が少し変わっています。購入前にその点はチェックしておきましょう。

さて、このデバイスを使わせていただく機会がありましたので、その使い勝手や感想などを、中途全盲である筆者なりに書いていきたいと思います。

※製品の機能や価格は執筆時点のものです。最新の情報は公式サイトでご確認ください。


シンプルで明快な外観


まずはその外観を見ていきましょう。

スティック型の本体に、容器などに固定するためのクリップが取り付けられています。
全体の寸法は長さ131mm×幅19mm×奥行37mm(最大突起部)。手のひらにすっぽりおさまるサイズです。
この本体は上端部分が最も厚みがあり、下端に向かって徐々に薄くなっているデザインになっています。例えるなら電子体温計をひとまわり大きくして幅を広くしたような感じ?むしろわかりにくいかも……。

重さは約38グラムと、エプロンや胸ポケットに入れても気にならない軽さ。ツルっとしたポリカーボネートの手触りは丁寧な仕上がりになっています。ちなみに本体の色は上部約5分の1はブラック、残りは製品名の通り水色というツートンカラー。

本体の厚みのある上端に色判別センサー、薄い下端に液面検知センサーが備えられています。本体表面の上寄りには、このデバイス唯一のインターフェイスであるスライド式のスイッチがあり、センサーの位置に対応して「上にスライドすると色判別」、「下にスライドすると液面検出」機能が起動します。シンプルで直感的に機能を把握できる設計です。ちなみに使わない時はスイッチをセンター位置に合わせておきます。
本体の天地や2つのセンサー、スイッチの位置は触れれば理解できるので、全く見えない筆者でもすぐに全体像を把握することができました。

なお本体裏面、スイッチの真裏にあるスリットは小型スピーカーがある部分。みずいろクリップは防滴設計になっていますが、この部分に水分が浸入すると乾くまで音声が聞き取りにくくなる場合があるので注意が必要とのことです。


手軽に色を調べられる「色判別」機能


衣服のコーディネートなど、色の判別が必要な作業は視覚障害者にとってはとても難しいミッションです。また色の記憶がある中途視覚障害者であれば、周囲の色情報を知ることでその風景をイメージし、体験をより豊かなものにすることができるでしょう。

みずいろクリップの色判別機能は、そのような時に役立つかもしれません。

本体の上端にある丸い部分が、色判別用のセンサーです。
この部分を色を調べたい物に押し当て、本体スイッチを上方向にスライドさせると、色の名前を音声で知らせてくれます。一回の操作で認識できるのは一色のみ。複数の場所を判別する場合はその都度スイッチのオン/オフの操作を行います。なお判別できるのは単色で柄や模様は判別できません。

2020年3月現在、判別できる色は以下の14色。、

赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑、
水色、青、紺、紫、ピンク、
茶色、白、灰色、黒

なお今後のアップデートで、判別できる色数の追加などが予定されているとのことです。

視覚障害者が色を判別する手段の一つとしてスマートフォンのアプリがありますが、その多くは外部からの光に影響されやすいというデメリットがあります。時間帯や天気、季節で太陽光の微妙な色は異なり、室内でも照明の色が判別結果に大きく影響します。調べる度に違った結果が読み上げられて混乱する経験は、この手のアプリを使ったことがある視覚障害者なら誰にでもあるのではないでしょうか。光色の他にも、スマホのカメラでは調べる場所をうまく捉えにくいというのも判別結果が安定しない一つの要因でしょう。

みずいろクリップの色判別センサーの横には小さなLEDランプが仕込まれています。
対象物に密着させてスイッチをオンにするとライトが光り色を判別します。そのため外部からの光に影響されず、常に安定した結果が得られるというわけです。またクローゼットの中など光量が不足しているような場所でも使用することができます。センサーを密着させることで、調べる場所を狙い撃ちできるのも利点でしょう。

逆に常にランプが照射されるため、光沢のある素材や光を透過するような素材では正確な結果は得られにくいようです。加えてその特性上、センサーを密着できないものの色を調べることも難しそう。幅広い用途を考えるとアプリとの併用がベターかもしれません。

また、やはり14色では細かい色を判別できないのが残念。
例えば筆者のクローゼットにある形や素材が似ているジャケット。「暗いネイビー」も「ダークブラウン」も「黒」と認識されてしまいました。筆者は中途全盲で持っている衣服の中には色を覚えているものもあるため、正確さというよりは別の色として判別して欲しいのです。このあたり、アップデートで改善されると良いな。
もちろん色数が多くなると音声から色をイメージしにくくなるなどデメリットもあるでしょう。このあたりに開発側のジレンマが伺えます。でも期待してます。

とはいえ「押し当ててスイッチ」というお手軽さは、ついついいろいろなものの色を調べてしまう楽しさがあります。
思わず部屋中の色々なものの色を調べまくってしまいました。壁紙の色、フローリングの色、窓枠の色……。今まで色があやふやだった頭の中の部屋のイメージが少しだけカラフルに書き換えられました。ハイテクガジェットを駆使しているというよりは、電子オモチャで遊んでいるような感覚。これはスマホでは味わえない面白さです。このあたりの「使うハードルのひくさ」がこのデバイスの真骨頂なのかもしれません。


飲み物のトラブルを解消する「液面検知」機能


コップに水を注いだりインスタント食品の容器にお湯を注ぐ時、うっかり注ぎすぎて溢れさせてしまったり、逆に全然注げていないことがよくあります。見えない・見えにくい人々にとっては日常茶飯事の失敗です。
結局指を容器の中に突っ込んで、どこまで注いだか調べたりしていました。ただこのご時世、ゆびで液面を調べるのは衛生的に問題がありそうですし、熱い液体でヤケドのリスクもあります。視覚障害者の中には液体を注ぐ音で注いだ量がわかる達人もいらっしゃると聞いたことがありますが、筆者はその域には到達できていません。残念。

そんな時に役立つのが、みずいろクリップの液面検知機能です。

スイッチを下方向にスライドさせると「注いでください」とアナウンスが聞こえます。
本体が容器の内側にくるようにセットし、注ぎたい位置がセンサー部分になるように固定します。あとは液体をゆっくり注ぎ、液面がセンサーの部分に触れるとアラームで知らせてくれる仕掛けです。
筆者は水や熱湯、コーヒー、牛乳くらいしか試せませんでしたが、たいていの液体は検知できるようです。あと注ぐ勢いが強いと、アラームが鳴ってから手を止める間に注ぎ過ぎてしまうことが多いため、ゆっくり注ぐか気持ち深めにセットするのがコツみたい。

本体には容器を挟むクリップが付いているのですが、挟み込む力はあまり強くはなく試した範囲では、ほとんどの場合手を離すとズレてしまいました。これはクリップを引っ掛けて容器ごと転倒させないための対策のようです。そのため液体を注ぐ際は、クリップと容器を片手でしっかりホールドしなければなりません。このあたりは少し慣れが必要かも。
なおクリップを固定するアタッチメントが現在開発中とのこと。注ぐ方の容器を片手で持つのが難しい場合などはそのようなものがあると便利でしょう。

あと注意が必要と感じたのは衛生面。
使用する前後はしっかり洗浄することはもちろんですが、使い捨てのカバーなどがあると安心かもしれません。ちなみに本体を食品用ラップで包み実験したところ、正常に検知できました。もしかしたら少し隙間があったのかもしれませんが、衛生度は多少でもアップするのでは……。使う側の工夫も必要かもしれません。


最長6分まで計れる「音声タイマー」機能


液面検出機能で、検出されたアラームが鳴ると、そのままタイマー機能が発動します。
スイッチをセンターに戻すまで、1分ごとに音声で知らせてくれます(最長6分まで)。これは明らかに、カップ麺などのインスタント食品のために付けられた機能ですね。

今まではお湯を注いだらすぐに別のタイマーやスマホで時間を計測しなければならず手間がかかりましたが、みずいろクリップを使えばシームレスに熱湯注入と時間計測が可能になりとても便利です。インスタント食品をよく利用するなら、これだけでも価値があるのではないでしょうか。今までダメにした食品の数を考えてみてください。

なおタイマー機能を単独で発動することはできませんが、液面検知機能をオンにして濡れた指でセンサー部分に触れるとタイマーが開始されます。今は思いつきませんが、覚えておくと何かの役に立つ用途があるかもしれません。


電池交換とアップデートの方法


みずいろクリップは構造上、ユーザー自身が電池を交換することはできません。
説明書によれば、1日あたり液面検知とタイマーを5回、色判別を100回のペースで約6ヶ月使えるとのこと。電池残量が少なくなると、スイッチをオンにした時に音声で知らせてくれるようです。

電池が切れてしまった場合は、同封の封筒にみずいろクリップ本体を入れポストに投函すれば、電池交換されたものが返送されてきます。交換費用は2,980円。
ここで注目したいのは、電池交換と共に、スピーカーの交換と本体機能のアップデートも提供されるというところ。つまり検出する色数のアップなど最新の機能を持ったバージョンにアップグレードされて戻ってくるということです。

このような通信機能を持たないデバイスは一度購入するとアップデートが提供されないことも少なくありません。有償ではありますが電池交換のタイミングで機能が強化されるという仕組みはユニークですね。

電池が切れた段階で新しい機能に魅力を感じなければ使うのをやめてもいいし、使いたい機能がアナウンスされるまで待ってもいいでしょう。
悩ましいのは、まだ電池残量があるのに新機能が使いたい場合でしょうか。また電池交換のタイミングによって不利益感が出ないよう、的確な情報提供を期待したいところです。まあ何も情報を得ず返送されてくるのをワクワクして待つという楽しみ方もあるのかもしれませんが。


スマホにはないシンプルさが楽しい。機能強化に期待!


みずいろクリップの魅力は、そのシンプルさにあると感じます。
使いたい方向にスイッチを入れるだけ。これならスマートフォンなどデジタル機器に抵抗のある視覚障害者でも簡単に使い始められるでしょう。

スマホが手放せない筆者でも、このシンプルさは新鮮でした。結構スマホアプリって面倒なんですよね。スイッチ一つで動作する軽快さは、その辺りの「面倒臭い」というハードルを大きく下げる効果があるようです。
最新の高性能なスマホアプリも便利なのですが、ガジェットとして使って楽しいデバイスと感じました。単純に筆者が「しゃべる機械」が好きというのもあるのですが。またそのシンプルさゆえ、ユーザー側の工夫でいろいろな使い方も考えられそうです。例えば書類ファイルに色のシールを貼って判別に使うなど。

正直なところ、クリップの使い勝手や認識できる色数など個人的に物足りないと感じた部分はありました。開発側もその辺りの要望は把握されているようですので、今後のアップデートに期待したいと思います。みずいろクリップが今後、どのような姿に進化していくのか。同社が開発中というスマートグラスと共に、注目していきたいところです。

みずいろクリップの詳細情報と購入は公式サイトの製品情報ページから。トップページでは紹介ムービーを見ることができます。
またSpotliteさんのインタビュー記事も公開されています。

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