2019年6月12日水曜日

[粗訳] 未来のマウスはあなたの目玉。


※このエントリーは「The mouse of the future: your eyeballs」をざっくりと翻訳したものです。

近い将来、あなたの「眼」がマウスになる?

By KATHARINE SCHWAB

最近の研究によると、支援技術としてよく使われるアイトラッキング技術が、人々の生産性向上に役立つ可能性があるという。ほとんどの人は、タッチスクリーンであれマウスであれ、指や手を使ってテクノロジーを制御している。一方、何年もの間、運動能力に障害を持つ人々は目を使ってデジタルインターフェイスを制御してきた。「Tobii Dynavox EyeMobile+」のようなタブレットは、脳性麻痺やその他の病気の人に、インターネットを使ったり、コミュニケーションしたり、さらにはマウスの代わりに使用して目だけでゲームをしたりする能力を与えている。

現在、研究者たちはアイトラッキング技術を一般ユーザーに提供する方法を研究している。先週開催された年次ACM Computer-Human Interaction(CHI)のカンファレンスで、研究者たちは、これまでほとんど支援技術の領域にとどまっていたユーザーインターフェースを、健常者が活用するための、3種類の新しい方法を発表した。この実験では、目を使ってコンピューターを操作することで、障害者だけでなくすべての人の生産性を高める可能性について示されている。これは、障害者のために構築されたテクノロジーは、他のすべてのユーザーにもメリットがもたらされるという、インクルーシブ・デザインの威力を示す例だ。。

1.電子メールなど、テキストの一部分を目だけで修正する

タイプミスは避けられないものだが、カーソルを戻して修正するのは面倒だ。オークランド大学とバース大学の研究者たちが、CHIで発表した研究論文によると、アイトラッキングを使うことで、これらの厄介な小さな間違いを修正し、テキストの一部を操作することができるという。
まず、修正したいタイプミスを調べる(恐らくいつもあなたが行なっているように)。そして「ReType」と呼ばれるプログラムを用いてタイピングを開始すると、ユーザーの視線に基づいて変更しようとしている単語を識別し、入力した単語に置き換える。この状態でEnterキーを押すとカーソルが元の場所に戻り、テキストを挿入したり削除するなどの編集作業を続行できる。つまりあなたの眼をマウス代わりにしてミスの編集を続けながらキーボードを操作できる。
この研究にはさまざまなキーボードユーザーが参加しており、その中には以前にもアイトラッキング技術を使ったことがある人もいた。研究者らは、この方法の処理速度がマウスに匹敵、時には上回ることを示した。加えて被験者の評判も上々だ。ニュージーランドのオークランド大学でコンピューターサイエンスの講師を務めるGerald Weber氏は、Fast Companyに対しメールで、
「私たちは、多くのユーザーが繰り返しのタイピングによる疲労を予防するのに「ReType」が役立つと期待していることを聞いて、とても喜んでいます。」
と、クリック、タイピング、マウスの使用といった小さな繰り返しのタスクによって引き起こされる筋骨格系の損傷について言及している。
現在のところ、Retypeはプロトタイプにすぎないが、Weber氏と同僚のChristof Lutteroth氏の研究チームが特許を取得しており、製品化したいと考えている。

2.マウスを使用せずにコードをナビゲートする

調査によると、開発者はコードのナビゲートに作業時間の35%、デバッグ時には情報の検索に約50%を費やしているという。これは作業効率を大幅に低下させる要因となっている。この問題を解決するため、Weber氏とニュージーランドのMedia Design SchoolとUniversity of Bathの研究者は、すでに確立されているアイトラッキング技術を使って、視線をナビゲーションツールとして使うことで開発者の作業時間を節約できるかどうかを調査した。
CHIで発表された研究によると、アイトラッキングはキーボードを使う場合と同じ程度の速度だが、マウスを使う場合と比較して遅いことがわかった。しかし、ほとんどの開発者がナビゲーションの手段としてアイトラッキングを使用することを選択したことも明らかになった。28人の参加者のうち21人が、マウスより80%以上長時間、アイトラッキングを使用した。
この研究では、Weber氏がアクセシビリティー団体と協力して開発した「Actigaze」という技術(現在ベータ版が公開されている)が使用された。Activgazeシステムを使えば、障害のあるプログラマーの作業を支援したり、すべてのプログラマーにコードをナビゲートするための別の選択肢を提供できる。

3.アイトラッキングによる共同作業者とのコミュニケーション

多くの人がリモートで作業するようになると、遠隔地とのコラボレーションが困難になる。しかし、CHIで発表されたPomona Collegeの研究者らによる研究は、アイトラッキングが、どのようにコラボレーション・ツールとして機能するかを示している。研究者たちは「Google Docs」のようなさまざまな場所からひとつの文章に対して共同作業するというタスクに注目した。
研究者は20組の学者を対象に、各組のスクリーン下部にアイトラッキング装置を設置し、共同編集者にテキストエディタ内で現在見ている場所を示しながら作業する実験を行なった。
共同編集タスクを完了したのち、相手の視線位置にアクセスすることができた参加者は、相互理解が深まり、共同注意が高まり、コミュニケーションが増え、相手の作業内容についての認識が高まった。(なお視線追跡技術はテキストエディター内にしか表示されないため、共同作業者はそのコンテキスト外で互いの目の動きを監視することはできない。)

これら3つの研究はすべて、アイトラッキングを使って生産性を向上させる方法を提案している。テキストを単独で編集する場合でも、他の人と共同編集する場合でも、コードを書いている場合でも、視線はマウスを補完するものになる可能性があり、さらにはマウス操作全体を置き換える可能性もある。


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