2019年1月7日月曜日

全盲が「バード・ボックス・チャレンジ」騒動をぼんやり考える。


バード・ボックス」という映画をご存知だろうか。
netflixが制作したこの作品は配信開始されるやいなや世界中で大ヒットを記録している。もちろん日本でも配信されており、筆者もラジオでよくこの作品のCMを耳にしていた。
そんな話題の作品だが、2019年が明けるとともに、作品が巻き起こしたある一つのインターネット・ミームの問題が世界中で報じられている。

「バード・ボックス・チャレンジ」と呼ばれるこの流行は、映画の主人公のシチュエーションをまね、目隠しで視覚を遮断。その状態で日常生活をしたりさまざまな行動にチャレンジし、その様子をYouTubeやSNSに投稿するというものだ。
そこまではいいのだが、問題はその内容だ。
ネットニュースでは、どんどん過激になってゆくバード・ボックス・チャレンジと、それを危惧するnetflixが危険な行為をやめるようアナウンスしたことを伝えている。


まあ筆者は中途全盲なので、慣れるまではあらゆる物に激突しまくり、日々アザやタンコブ作りまくりの「ナチュラル・バード・ボックス・チャレンジ」状態が長らく続いていたわけで多少のことでは驚かないが、流石に自動車はまずいだろう。
自分がケガするのはまだ一万歩譲っていいとして他人を巻き込むのは論外だ。

このブームがいつどのようにして始まったかは不明だが、米国での配信開始が2018年12月14日であり、年末の時点ですでに「まとめ動画」が登場していることからも、このミームが爆発的に流行していることが想像できる。
ちなみに過去に流行した「○○チャレンジ」については、以下のサイトでまとめられている。


この他にも「シナモン・チャレンジ」や「コンドーム・チャレンジ」などがあるようだ。ほとんどのチャレンジが、比較的「手軽に試せる」「動画映えする」ことで急速に流行し、結果エスカレートして社会問題化するといった末路を歩んでいる。最初からアウトなチャレンジもあるけどね。
「バード・ボックス・チャレンジ」も初めのうちはたわいもない内容だったはずなのに、どんどんエスカレートしてしまい、netflixも看過できなくなったのだろう。
実際のところ、どれだけのチャレンジャーが負傷したり人様に迷惑をかけたのかは知る由もないが、なにせまだ1ヶ月も経ってないのである。netflixの対応は早い方と言えるだろう。関係者がどんな気持ちでクリスマスや新年を迎えたかを想像するに実に気の毒だ。

バード・ボックス・チャレンジの流行に対しては、各国の視覚障害者や関連団体からも懸念の声が上がっている。「目隠しして危険な行為にチャレンジする」という内容だけに、反応するのは当然だろう。


この記事では、カナダ・レジーナ在住の視覚障害者と、非営利団体CNIBからのコメントが寄せられている。
筆者の感想も混じるが、チャレンジの失敗シーンが繰り返されることで、「見えない」ことが無力で不幸な状態である、という誤ったイメージを人々に与えるのではないかという懸念がある。訓練や白杖などの補装具を用いることで、視覚に障害を持っても不自由なく生活できるにも関わらずだ。
さらに万が一、他人を巻き込む事故でも起これば、そのチャレンジャーと視覚障害者を重ねて見る人々もいないとも限らない。


一方で、バード・ボックス・チャレンジが、普段あまり意識することのない視覚障害者の生活に目を向けてもらう良い機会だという意見もある。チャレンジの安全性を確保した上で、この流行が視覚障害者の現状を体験し、どのような助けが必要であるかを考えるきっかけになることを期待するというわけだ。


視覚障害の周知活動のひとつとして、アイマスクを使用した盲人体験というものはよく行われているが、それを世界中でやったら?という感じ。ただ個人的にはこの類のチャレンジは「失敗」が期待されている傾向があるためなかなか難しいと考えている。ただ逆に、このブームが従来からの盲人体験に「楽しい」要素を加えるヒントになる可能性もある。
また「視覚に頼らない行動」が、歩行訓練や生活訓練といった視覚リハビリテーションへの関心を高め、ひいては現在これらのサービスにつながっていない当事者への周知にもつながるのでは、という声も。


どんな流行も、いつかは終わる。netflixから注意喚起メッセージが発信されたことで、この流行が沈静化するのか。今のところ重大な事故は報じられていないが、このままエスカレートすればそれも時間の問題だ。注意喚起が効いて沈静化するか、単純に飽きてやらなくなるのか。最悪はチャレンジャー本人だけでなく、周囲を巻き込んだ事故の発生だろう。
これを書いている時点では「#Birdbox challenge」や「#Birdboxchallenge」でTwitterを検索すると数分おきに新しいチャレンジがポストされる状態で、まだ勢いはある。だがそれに混じって注意喚起も多く看られた。ちなみに日本にはまだ上陸してなさそう。


全盲で年がら年中「バード・ボックス・チャレンジ」してる筆者としては、エクストリームなチャレンジがなくなり、「見えない・見えにくい」人々に思いを寄せる運動に路線変更できれば、世の中も少しはマシになると思うのだけれどねえ。

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