2018年11月26日月曜日

アロマ・ペインティング 〜 視覚障害者に「絵を描く」楽しみを。


視覚障害者と絵画の関係を考えると、どうしても「鑑賞」の話がメインになる。
一部の美術館では音声ガイドを用いて絵画を「言葉」で説明したり、触図や立体的な印刷技術を用いて楽しむ視覚障害者向けのタッチツアーを開催したりしており、目が不自由でもアートに触れる機会は少しずつ増えつつある。
だがしかし、視覚障害者が「絵を描く」となると、一気にハードルが上がると感じるのは筆者だけだろうか。
もちろん、見えにくさによりそのハードルの高さはまちまちだろう。ロービジョンなら紙の色やインク、絵の具の色を工夫する必要があるかもしれない。では筆者を含めた全盲もしくはそれに近い視覚障害を持つ場合、自由に絵を描く手段はあるのだろうか。

晴眼者が絵を描けるのは、ペンや筆で描いた線や色、描いた絵の全体像を視覚で確認できるためと考えられる。視覚情報が遮断されている場合、これらの情報を視覚以外の方法で受け取らなければならない。ただ闇雲に絵を描くのではなく、全盲でも作品を把握し、コントロールできる主体性が必要である。
視覚障害者によるビジュアル表現手段についてはさまざまな研究や技術開発が行われているが、ここでは「香り」と「触覚」に注目したペインティングの試みを紹介しよう。

インド・ムンバイを拠点に活動しているアーティストSuresh Nair氏と彼のアーティスト仲間Samina Sachak氏によって考案されたのが、いろごとに天然エッセンスを用いた香りがつけられたアクリル絵の具「Aroma paint」。
たとえばイエローならシトラスレモン、ホワイトならシナモンの香りがつけられており、全10色セットとなっている。
視覚障害者はこの絵の具を使い、カンバスと絵筆の位置をアシストされながら、絵の具の香りを頼りに自由に絵を描く。
一度にたくさんの色を用いないこと、色を混ぜないこと、色同士の間隔を保つのがポイントのようだ。カンバス上の絵の具の香りはおよそ12日間で揮発するという。
これまで粘土や彫刻といった触覚を用いる表現しか体験したことのなかった子供達も、この香りの絵の具をすぐに使いこなし、抽象的で鮮やかな作品を生み出せたとのことだ。

また米国、ノースカロライナ州にある「paintfortheblind.com」では、視覚障害者が触覚と香りで手軽にペインティングを楽しめるソリューションを提供している。
同社が開発した「VISION BOARDS」は、天使やマーメイドといったモチーフの輪郭を指で触れて確認できるカンバス。キットにはこれに加え、香りで色を判別できる3種類の絵の具などが含まれる。こちらの絵の具は直接指でカンバスに塗ることが可能とのこと。
このキットを購入すれば、目が見えなくても、カンバスの輪郭を感じながら、絵の具を香りで判別しつつフィンガー・ペインティングを楽しめる。どちらかといえば自由に絵を描くというよりは、塗り絵に近い製品なのかもしれない。だが自分で色を選びカンバスに定着させるという「絵で表現する」楽しさの一端を感じられるだろう。

全盲の視覚障害者が絵を描くというと、何か超人的な能力を持つアーティストのエピソードばかりが語られがちだが、このような試みが広がれば、多くの視覚障害者にとって表現の幅が広がるだろう。
その作品は従来の「絵」というフォーマットに当てはまらないかもしれないが、線や色彩で感情を表現する手段は、視覚障害者の生活やコミュニケーションを確実に豊かにしてくれるはずだ。

もしかしたら今後、デジタルデバイスや人工知能、ブレイン・マシン・インターフェイスなどの技術が進歩し、視覚障害者のイマジネーションを的確にアウトプットできる未来が到来するかもしれない。きっとそこには、かつて誰も目にしたことのない全く新しい表現が出現するはずだ。

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