2021年7月7日水曜日

視覚に障害のある子供たちのための新しい触覚プロトコル「ASFG」。2本指のジェスチャーで立体モデル上を探索。

illustrations engageant des simulations format portrait

画像引用元:Mirage News


視覚障害者が写真やイラストなどのグラフィカルな情報を得る手段として用いられるのが「触図」です。触図は一般的に、元となる素材の形(輪郭)をそのままエンボス加工して制作され、読者はその凹凸を指先でなぞりながら頭の中に形をイメージすることでその内容を理解します。もしくは理解を試みます。

私もこれまで様々な触図を体験してきましたが、事前に情報が与えられていない状態でその内容を理解するのは非常に難しいというのが率直な印象です。中と失明者の私でもそうなのですから、視覚的な経験の無い、もしくは浅い子供たちにとっては触図から正確な情報を得るにはかなりの訓練と経験が必要でしょう。


触覚は視覚と比較し、テクスチャや高低差を認識することは得意でも、空間的な情報を認知することは難しいと言われています。

これまでもこの感覚のギャップを埋め触覚によるエクスペリエンスを向上させるため、情報提供を工夫したり、異なる触感の素材を組み合わせる、触れる場所に応じてサウンドを再生するなど、様々なインタラクションに関する研究が行われてきました。


スイス、ジュネーブ大学(UNIGE)とフランス、リヨン第2大学の研究チームは、視覚に障害のある子供が視覚的なイメージをより早く、正確に理解するための新しい方法を考案しました。

ASFG(Action Simulations by Finger Gestures)と名づけられたこの手法は立体的に構築された触覚モデルの上を、人差し指と中指を「脚」に見立て、「歩く」「走る」「ジャンプする」といったアクションで探索します。

視覚障害者にとって脚による運動は外部の環境と対話するための重要な手段です。このアクションを2本の指でシミュレーションすることで立体モデルの触覚とこれまでの運動によって得られた空間認識の経験を結びつけ、理解度を高めようというのがASFGの基本的な考え方です。


実験では階段や滑り台など7つの立体モデルと、同じモチーフの触図を用意し、視覚に障害のある子供と晴眼の子供に対し、従来の触図とASFGを用いた立体モデルの探索との間で理解度を比較しました。

その結果触図を指先で触れるよりも、立体モデルをASFGを用いて探索する方が理解度が高く認識に必要な時間も短いことがわかりました。またASFGによる探索では視覚に障害のある子供と晴眼の子供の間には大きな差は見られませんでした。

研究チームはこの実験結果を、視覚の有無にかかわらず運動によって構築された空間認知能力が触覚を補った可能性を示していると考えています。そしてASFGという手法は視覚に障害のある子供たちのイメージ識別能力を改善する新しい触覚教材のデザインの可能性を示唆していると述べています。


触覚モデルの上を2本指でヨチヨチ探索するという動作は子供たちにとっては手遊びのように楽しいものですし、目の見える、見えないにかかわらず同じ経験を共有できるという意味ではインクルーシブな教材を開発する上でのヒントとなるでしょう。

また従来のエンボス加工を用いる触図についても、ASFGに最適化したストーリーせいのある工夫を施すことにより理解度が向上する可能性も考えられます。

盲目の大人としても、例えば触地図などをこの方法で探索すると理解度が向上するかもしれません。今度駅にいったら試してみようと思います。まあ白杖を抱えたおじさんが駅でヨチヨチやってる姿が周りにどう見られるかは、未知数ですけどね。


参考:Exploring 3D miniatures with action simulations by finger gestures: Study of a new embodied design for blind and sighted children



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