2019年6月23日日曜日

スペイン発。視覚障害者をカラフルに誘導する「Navilens」。

Navilensのマーカー(画像引用元

いま、スペイン、バルセロナの地下鉄のあちらこちらに、ちょっと不思議な幾何学模様のステッカーが貼られているという。券売機やエスカレーター、プラットホームやトイレの端々に見つけられるおよそ5cm四方のカラフルなステッカーは、「Navilens(ナビレンズ)」と呼ばれるシステムのマーカーだ。

スペインの同名スタートアップとアリカンテ大学のMobile Vision Research Labによって共同開発された「Navilens」は、コンピュータービジョン技術を応用し、スマートフォンと施設内に貼られたマーカーを通じて、視覚障害者への情報提供と移動支援を目的としたシステムである。人の手を借りるか、脳内地図をトレーニングしなければ移動することが困難な視覚障害者でも、単独で自由かつ安全に施設を利用できるように設計されているとのことだ。
現在、バルセロナのTransports Metropolitans de Barcelona (TMB)などの協力を得て、地下鉄やバス停などの公共交通機関や一部の公共施設での実証実験が行われている。

Navilensの使い方はシンプルだ。iPhoneもしくはAndroidスマートフォンに無料のNavilensアプリをインストールしておき、マーカーが設置されている施設でアプリを起動。スマートフォンのカメラでマーカーを捉えるとスマートフォンが振動し、さまざまな情報を音声で伝えてくれる。この仕組みだけを聞くとQRコードと大きな違いはないようにも思えるが、Navilensには視覚障害者でも容易にマーカーを読み取るための工夫が施されている。

1.高速なスキャニング
Navilensはマーカーを瞬時に読み込むことができる。QRコードのようにコードにカメラを向けてフォーカスする必要がないため、おおよその方向にスマートフォンをかざすだけで素早くマーカーを見つけることができる。公式サイトによれば、移動しながらでも利用できるとのことだ。

2.長距離から複数のマーカーを検出
マーカーは最大で15メートル程度の距離からもスキャンすることができる。さらに160度という広角で複数のマーカーを同時に認識することも可能という(最大200個)。QRコードのように、マーカーのある場所を覚えておく必要はない。

3.マーカーまでの距離と方角を算出
これがQRコードとの最大の違いだろう。マーカーを検出すると、Navilensはスマートフォンからマーカーまでの正確な距離と方角を計算してユーザーに報告する。つまり情報の取得だけではなく、ナビゲーションにも使えるということだ。視覚障害者は行きたいポイントを見つけたら、示された方向へ進めばいい。

QRコードのように、コードの場所を定めてフォーカスロックする必要がないというのは、視覚障害者にとって非常に大きなアドバンテージのように思える。マーカーの配置にもよるが、15メートルの範囲なら、何かしらのものは見つかるのではないだろうか。想像だけではあるが、当事者として安心感をお覚える。実際にNavilensを体験した視覚障害者の評判も上々のようだ。

またNavilensは、マーカーに設備の名前だけでなくあらゆる情報をネットワークを通じて取得することができる。例えば列車の運行情報や飲食店のメニューなどが挙げられる。
また多言語対応も考慮されており、端末の言語設定に応じて表示する言語を切り替えることもできるようだ。視覚障害者だけでなく外国人観光客など多くの人々にとっても利益をもたらすと開発者は語っている。

マーカーを用いた情報提供やナビゲーションは、電源が必要で故障リスクを持つBLEビーコンを用いるシステムと比べ、圧倒的に導入・運用コストが低いというメリットがある。NavilensはQRコードやバーコードといった従来のマーカー技術を拡張することで、視覚障害者に対する低コストかつフレキシブルな情報提供とナビゲーションを実現しているようだ。ここは想像だが、BLEビーコンと比べた時のデメリットは、暗い場所に弱いとか、障害物の影に隠れると使えないというくらいだろうか。

このシステムが一般にも幅広く受け入れられるには、マーカーのデザインも重要になってくるだろう。筆者はデザインを確認することはできないが、支援技術っぽくないポップで違和感のないものなら受け入れられるかもしれない。ただ「カラフル」ということなのでモノトーンなインテリアだとちょっと浮くかな?

Navilensは将来的に、空港やホテルといった施設だけでなく、屋外など幅広い施設にもこの技術を広めていきたいと考えているようだ。筆者の妄想だが、同時に複数のマーカーをキャプチャーできるなら、コンビニなどの商品棚にマーカーを貼付して並んでいる商品のリストを取得したり(マーカーの大きさがネックかな)、それこそ音声コード代わりにも応用できるのではないだろうか。

必ずしも万能なソリューションではないかもしれないが、設置条件を整えられれば、かなり有効な技術のように思える。電波やセンサーではなく、コンピュータービジョンを用いたナビゲーションの可能性を「Navilens」に感じることができた。
うーん、ぜひ一度体験してみたいものだ。
スペインいいところみたいだし。ねえ。

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