2018年9月4日火曜日

スマートグラスのニューウェーブ「AMAL Glasses」


AIによる画像認識技術の進歩により、視覚障害者の「目」の代わりとなるテクノロジーが続々と登場している。
このブログでも紹介したスマートフォンアプリ「Seiing AI」や「Envision AI」がその一例だが、これをもういっぽ進めたメガネ型ウェアラブル・デバイス「スマートグラス」は、視覚障害当事者の間でも大きな関心を集めているデバイスだ。
代表的なものには、イスラエルのスタートアップが開発した「Orcam My Eye」や、米国の遠隔支援サービス「AIRA」が採用している「Horizon」、日本でも文字認識に特化した「Oton Glass」などがある。

アラブ首長国連邦(UAE)、ドバイに本拠地を奥くMIH Systemsが現在開発を進めているスマートグラス「AMAL Glasses」は、そのような視覚障害者向けスマートグラスの中でもひときわユニークな存在だ。
AMAL Glassesは、軽量なサングラス型のウェアラブルデバイスと、ポケットに収まるコントローラーで構成され、これらはケーブルで接続される。グラスにはHD品質のカメラを搭載、高感度マイク、オンセイフィードバックを聞くためのスピーカー、GPSなどの各種センサーを内蔵する。
操作はグラスのテンプル(つる)のタッチジェスチャ。将来的には音声コマンドによる操作にも対応予定とのことだ。

ではAMAL Glassesではどのようなことができるのだろうか。
公式サイトでは、現時点で25もの機能が予告されている。
文字を読み上げるOCRや、色・紙幣・風景・人物などの認識といった定番の画像認識機能はもちろん、オーディオブックの再生やボイスレコーダー、リマインダー、さらに音声でプレイできるゲームまで用意されている。道に迷ったときに現在地を取得してヘルプを呼び出せる「SOS」機能も心強い。
中東発のプロダクトらしく、ムスリムのために、礼拝の時間をリマインドしたり、キブラの方角を知らせてくれる機能も用意されている。

機能をざっと見渡してみると、スマートグラスとスマートフォンが合体したような印象を感じる。いや、どちらかといえば画像認識もできるウェアラブルなスマートスピーカーというべきだろうか。
単なる文字や物体検出だけでなく、日常生活で役立つ機能を盛り込むことで、読書や買い物といった限定的なシーンだけでなく常に身につけて視覚障害者をサポートするデバイスを目指して開発されていると感じた。

AMAL Glasse最大の特徴は、アプリを追加インストールして機能を拡張できる「Application Store」だろう。無償配布予定のSDKを利用して誰でも視覚障害者のためのアプリを開発でき、専用のアプリストアから配布できるようになるとのことだ。
たとえば音声を使ったナビゲーションやAIRAのような遠隔サポート、画像や音声認識を活用したさまざまな用途が考えられる。もちろん、ゲームやスポーツ支援なども楽しそうだ。視覚障害者支援プラットホームとしての、スマートグラスの可能性を感じさせる。
同じ視覚障害を持っていても、個人のニーズは微妙に異なる。ユーザーのライフスタイルや行動範囲に合わせてカスタマイズしたり、就労や教育現場にマッチしたアプリケーションを開発することもできるだろう。

AMAL Glassesはアラビア語、英語など7言語に対応(日本語には非対応)。
早ければ2018年内にも出荷が開始される予定だ。

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